今回の衆院選挙では自民党が予想以上の敗北となった。
例えば、ベテランの選挙プランナーで選挙予測に
定評がある三浦博史氏は、自民党が235議席を
獲得すると見ていた(『サンデー毎日』11月3日号)。
しかし全く外れた。これまでは投票率が下がれば組織票を持つ
自民党に有利と言われて来たが、
今回は投票率が低かったにも拘らず、惨敗を喫した。
有権者の自民党への不信感はかなり深い。野田佳彦代表が率いる立憲民主党が
大きく議席数を伸ばしたことは、
国会での同党の影響力を拡大でき、
党内でも野田代表の求心力が強まるので、
歓迎すべき結果だった。自民党内でも、今後の取り組みを進める上で
大切な役割を果たしてくれそうな人材はそれぞれ議席を
確保できたようなので、これもプラスの材料になる。
しかし、与党がこれだけ負けると大きな政局に突入するのは、
恐らく避けにくいだろう。そうすると、暫く皇位継承問題を巡る議論は
足踏みせざるを得ないのではないか。
少なくとも政局の行方が一先ず定まる迄は、
政府·国会として責任ある取り組みは困難になるはずだ。しかし逆に、その間、国民の側から引き続き
効果的な働きかけが可能になるとも言える。今後、政府·自民党がどのような体制になるのか。
「石破おろし」が本格化するのか、どうか。
特別国会までに最大1カ月の猶予があり、
やろうと思えば臨時の総裁選を行うことも
十分に可能だ。
既に“ポスト石破”として様々な名前が挙がっている。自民党が弱体化して窮地に陥っている局面で、
来年夏の参院選も睨みながら、手を挙げて
総理·総裁を目指す政治家がいるのか、どうか。
いるとすれば、それは誰か。もし高市早苗総理·総裁が登場することになれば、どうなるか。
選挙前から議席を大幅に減らしているので、
国会運営にはこれまで以上に立憲民主党の協力が
必要になっており、様々な面で譲歩せざるを得ない弱みがある。その場合、ひょっとすると高市氏の方が今の石破茂首相よりも
党内の男系派を抑えられる可能性が高いかも知れない。
別に名前が挙がっている茂木敏充前幹事長の場合は、
上皇陛下のご譲位を可能にした皇室典範特例法の時の
不誠実な態度の為に、野党からは全く信用されていない。
或いは林芳正内閣官房長官なら…。とにかく石破体制を維持できた場合でも、
政府·自民党が安定を回復しないと、
皇位継承問題という重大なテーマに本腰を入れて
取り組むのは困難だろう。一方、今回大勝した立憲民主党で目を向けておくべきは、
今回の選挙に当たり、党内の男系派(直諫の会=重徳グループ)が
「女性天皇=◯、女系天皇=☓」で足並みを揃えた事実だ。
泉健太前代表の時に党の論点整理をまとめた際は、
「女性天皇」どころか「女性宮家」にさえ反対して、
結局、女性天皇に一言半句も触れられず、
女性宮家についても両論併記的な内容にとどまった
残念な経緯がある。それに比べると、彼らとしては大幅に譲歩したことになる。
これは男系派リーダーの重徳和彦氏が、
野田新体制のもとで代表選の論功行賞に近い形で
政調会長に就任する際に、その線を受け入れた結果かと
想像している(野田代表の「男系の女性天皇」という
発言とも符節が合う)。勿論、選挙対策として女性天皇反対は
不利に働くという計算もあったはずだ。
NHKのアンケートなどは選挙対策の一貫として、
前職などで秘書を抱えているような場合、
本人ではなく秘書が支持者の動向や後援会幹部の意向、
対立候補者の主張などを勘案して、
選挙に最も有利になると考えられる回答をしていたケースも、
少なからずあったらしい。しかし、その中身を見ると、自民党も含めて
全体として女性天皇にハッキリと反対している候補者は
意外と少なかったのが印象的だ。
これは、少なくとも女性天皇に表立って反対することは
選挙に不利になる、という認識がかなり広く
共有されていることを示す事実だろう。或いは、自民党でも女系天皇について
賛否を敢えて回答しないケースも、見られた。
これが何を意味するかはほぼ明らかだろう。【追記】
10月29日発売の「女性自身」にコメント掲載。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
BLOGブログ